ちいさな儀式

滝 土を暮らす

家の近所
歩いてすぐのところに
小さな滝があります。

小さな山の麓で
昔はきっと水がとても豊富だったと思うのですが
今は、隣に水力発電所ができていて
小さく水が流れています。

私の散歩コースで
同時に、いろんな人の日常を彩る
大事な場所です。

 

時間によっていろんな参拝の人に出会います。
おじいちゃんもおばさんも子供もいます。
お寺があり、たまに管理に来る家族がいらして
時々、お菓子とか、すあまとかいただきます。
私もクッキーをあげたり。

そこで、歌を歌います。
もう2年。
元合唱部としては
歌えるのはとても楽しいのです。

滝は、木々に囲まれ
空が見えて、音を出すには格好の場所で
音を出したいと思うのは、
私だけではないようで
毎朝法螺貝を吹く人とか
読経しながら発声練習する人とかいます。

 

2年前に比べ
首の周りの筋肉がだいぶほぐれ
姿勢が変わり
気持ちもだいぶ変わりました。
私の音域はだいぶ広がり
最初の頃は滝の音に打ち消されていた声は
今は入ってくる人たちが気がつくほど大きくなりました。

とても辛い日々を過ごしていた
2年前の冬。
滝の前で朝ごはんを食べて
歌うことで私は少しずつ、少しずつ
乗り越えてきました。

 

いつも、鳥や木々や山に向かって
祈りとして歌います。
きっと昔からのパワースポットだったそこは
私には秘密の通路のように感じられます。
歌うことで扉が開き
山と空が響きあうのを感じます。
上手な日は、鳥が来てくれます。

最近は、たまに勝ち合ってしまう
滝のお客さんに「きれいな声ですね」
と褒められるようになりました。

 

いつか、小さなステージで歌いたいなぁと思います。
少し暗い感じのお酒が飲める場所かなぁなどと
なんとなく妄想します。

きっと頼んだら
滝でコンサートをすることだって
可能だと思います。
でも、今は、まだ毎日の小さな私だけの喜びとして
この行事をとっておくのです。
私だけのための。ちいさな儀式。

なんとも贅沢なことだなぁと
たまにふと思います。

 

滝

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